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民法2-不動産賃貸借契約・保証債務

「民法(債権関係)改正中間的論点整理」のコメント第2弾として、不動産所有者、市民の皆様両方に身近なテーマである、不動産(建物)賃貸借契約と同契約更新後の保証債務の存続について、コメントしてみたいと思います。

1. 論点箇所
「第12 保証債務」のうち、「7 根保証」「(1) 規定の適用範囲の拡大」(NBL953号付録44頁)及び「第45 賃貸借」「3 賃貸借と第三者との関係」「(4) 敷金返還債務の承継」(同付録136頁)。

2. 同論点に関するコメント
貸金等根保証契約に関する保証人保護の規定(民法465条の2から465条の5までの規定)は、不動産(建物)賃貸借契約における保証人の責任に適用する必要はないと考えます。
すなわち、「貸金等債務」(民法465条の2第1項)には、不動産(建物)賃貸借契約によって負担する債務を含める必要はないと考えます。
ただし、現行の民法619条2項本文を改正し、不動産(建物)賃貸借契約における保証人の責任は、建物賃貸借契約更新後も原則として存続し、賃貸人及び保証人が特段の合意をした場合には、この限りでない旨を民法又は借地借家法(同法26条4項を新設するなどして)において定めるべきです。

3. 理由
(1)民法619条2項本文と判例、実務
建物(アパート、マンション、オフィス、店舗など)の賃貸借契約において、建物のオーナー(所有者)は、保証人を得た上で、建物賃貸借契約を締結することが通常です。
この建物賃貸借契約の保証人の責任が、賃貸借契約更新後も存続するか否かが争われることがあります。
この点について、最高裁平成9年11月13日判例タイムズ969号126頁は、「期間の定めのある建物の賃貸借において、賃借人のために保証人が賃貸人との間で保証契約を締結した場合には、反対の趣旨をうかがわせるような特段の事情のない限り、保証人が更新後の賃貸借から生ずる賃借人の債務についても保証の責めを負う趣旨で合意がされたものと解するのが相当であり、保証人は、・・・更新後の賃貸借から生ずる賃借人の債務についても保証の責めを免れないというべきである」として、建物賃貸借契約の保証人が、賃貸借契約更新後も、原則として保証債務を負う旨を明らかにしています。

また、近時建設されたマンション(区分所有建物)やオフィスビルなどに入居する方が締結する建物賃貸借契約書では、賃貸借契約更新後も、保証人の責任は存続すると定めていることが一般的です。

加えて、建物の借主が賃料を滞納しても、未払賃料が急激に増えるわけではなく、数か月分の賃料を滞納した場合には、建物賃貸借契約を解除し、建物退去明渡しを求める実務を促すことによって、保証人の責任が過大となることを防止することができます。

また、当初の賃貸借契約期間についてのみ、保証人となることを引き受けるのであれば、保証人は、その旨賃貸借契約書に記載し、「賃貸借契約更新後は、保証人は、責任を負わない。」と賃貸借契約書に明記すれば足ります。

そして、建物のオーナーが安心して建物を賃貸できるようにし、不動産市場を活性化させるためにも、賃貸借契約更新後も保証人の責任が存続するとする方が好ましいといえます。

したがって、建物賃貸借契約の保証人の責任が、賃貸借契約更新後も、原則として存続するとする、最高裁判例及び近時の建物賃貸借契約における保証契約実務について、私も賛成です。

そうすると、「従前の賃貸借について当事者が担保を供していたときは、その担保は、期間の満了によって消滅する。」とする現行民法619条2項本文は、上記最高裁判例や近時広がりを見せている建物賃貸借契約における保証契約実務に反する規定となっている、ということができるのではないでしょうか。
なお、この論点に関して規定した、借地借家法の規定は、見当たりません。

(2)民法619条2項本文を民法(債権関係)改正の議論の対象とするべき
ところが、「民法(債権関係)改正中間的論点整理」では、民法619条2項本文を、改正の議論の対象としていないようです。
私が述べている論点が、あまり重要ではない(!)からなのかもしれませんが、判例や解釈によって解決するのではなく、国民一人ひとりが、条文を読むことによってすぐにわかる民法とすることが、今回の民法改正の趣旨の一つであると理解しています。
そうであるなら、やはり、民法619条2項本文を民法(債権関係)改正の議論の対象とするべきと思われます。

建物賃貸借契約書にも、先ほど触れた近時作成、締結されるもの以外にも、更新後の保証人の責任について特に記載していない賃貸借契約書も依然とあると思われ、本論点に関する紛争を予防するためにも、民法619条2項本文を民法改正の議論の対象とするべきです。

他方で、昔から、貸金などの保証人になった方が、保証人になった後相当期間が経過した後に、多額の未払債務の支払を請求され、場合によっては破綻に追い込まれる事例が後を絶ちません。
このような保証人保護の要請もあって、平成16年に民法が改正され、貸金等債務の保証人となった方の責任の範囲を限定する規定として、民法465条の2から同法465条の4の規定が設けられています。
不動産賃貸借契約の保証人の責任を、かかる貸金等根保証契約に係る保護規定の対象とすることも一案ですが、こと建物賃貸借契約については、そこまでする必要はないと思われます。

鹿児島シティ法律事務所 弁護士 萩原隆志