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民法3-債務引受・過払金返還請求等を前提に

「民法(債権関係)改正中間的論点整理」のコメント第3弾として、債務引受に関する論点について、コメントしてみたいと思います。

1. 論点箇所
「第15 債務引受」のうち、「1 総論(債務引受に関する規定の要否)」(NBL953号付録54頁)

2. 同論点に関するコメント
債務引受の要件・効果を定める規定を民法に設けることについて、積極的な必要性をあまり見出すことができないが、新規定を設ける場合には、第三者のためにする契約に関する規定などとの整合性を図る必要があり、慎重な検討を要すると思われる。

3. 理由
債務引受には、主に、(1)債務者が負っている債務を、別の当事者が債務者と同じ立場で債務を引き受け、従来の債務者も併存的に債務者となる併存的債務引受と、(2)債務者が債務の負担から免れるかわりに、新たな引受人が債務を負うことになる、免責的債務引受があります。

私も、弁護士として仕事をしていて、この債務引受は多く活用します。
例えば、過払金返還請求を伴う任意整理、債務整理のご依頼において、その他のご家族も多重債務となっていて、同じ債権者に対する債務を抱えていらっしゃるなどの場合には、この債務引受を活用して、一挙に多重債務を解消する(又は軽減する)ことが可能となる場合があります。
また、離婚(再婚支援)のご依頼において、財産分与の対象として住宅などの不動産がある場合には、不動産(住宅)名義の変更に伴う住宅ローンの返済方法の変更を目的として、この債務引受の活用(及び債権者である地域金融機関や銀行などの金融機関との交渉)を検討することがあります。
契約上の地位の譲渡と同じように、実務上、よく登場する概念であるのに、民法に規定がないことについて、以前から不思議に思っておりました。
債務整理・任意整理、多重債務問題、離婚問題、債権回収、金融法務、組織再編などのプロとして、いまさら債務引受の規定を民法に定める必要性がないように感じていますが、最低限の規定は設けてもよいような印象は持っています。
もっとも、特に併存的債務引受については、第三者のためにする契約(現行民法537条以下)となる場面があるため、現行民法及び改正後の民法との規定との整合性には慎重な検討を要すると思われます。

鹿児島シティ法律事務所 弁護士 萩原隆志